PRINCE2 Training Organization Logo PEOPLECERT(ペーパーバック:342ページ;出版元:Stationery Office Books; 2009年版 (2009年6月8日);言語:英語(他言語版も有り); ISBN-10: 0113310595; ISBN-13: 978-0113310593)

イントロダクション

この非常に価値のあるマニュアルは342ページにも及び、PRINCE2講座の帰り道、後ろポケットに気軽に滑り込ませることはできません。しかし講座終了後、プロジェクトにおいて重要な、「今何を行うべきなのか」を考える際に参照できるようオフィスに備えておくと大変役に立つのです。

最新版のマニュアルは2009年に出版されて以来、繰り返し増刷されています。直近では2014年に増刷され、表紙にはAXELOSベスト・マネジメント・プラクティスのロゴが付けられました。数点の誤植が訂正された以外、2009年より内容に変更はありません。

参考図書

信頼性が最も高いPRINCE2フレームワーク参考図書である本書があれば、組織は独自のマネジメント手法をゼロから生み出したり、「車輪の再発明」を行う必要がありません。もちろん組織及び既存のビジネス・プラクティスに適合するようカスタマイズを行い、PRINCE2を簡単に用いることができるのです。

非常に実用的なマニュアル

プロジェクトの指示及び管理において、なぜ本書に大きな価値があるのでしょうか。まず、本書ではプロジェクトにおいて何が、いつ、誰によって行われる必要があるのかを示されています。PRINCE2は包括的なプロジェクト・マネジメント・フレームワークです。すなわち、どのようなタイプのプロジェクトにも利用することができ、明確に定義されたPRINCE2プロジェクト・ライフサイクルの説明は、世界中のプロジェクト・マネージャ及びプロジェクト・スポンサーにとって実用的なのです。のみならず、PRINCE2で推奨されている26のマネジメント製品も、詳細に説明されています。以上が雛型としての役割を果たし、独自のプロジェクト文書を作成する際にカスタマイズすることができるのです。

内容

では、マニュアルの内容を細かく見ていきましょう。第1章では、プロジェクトが組織内の通常業務活動といかに異なるのか等、導入的な概念が扱われています。第2章は、7つに及ぶPRINCE2の原則を扱っています。原則とは、指導的義務であり、推奨されるグッドプラクティスのことです。PRINCE2はプロジェクト・マネジメント・ベスト・プラクティスの総合体のため、プロジェクトにおいて意思決定が必要な際、原則を心に留めておくことが常に有用なのです。

PRINCE2 テーマ

第3~10章では、ビジネスケース、組織、品質、計画書、リスク、変更、進捗の7つのPRINCE2テーマが扱われています。これらのテーマは、プロジェクト全体を通して継続的に取り組むべきプロジェクト・マネジメントの側面です。例えば、リスクに関する章では、リスクが何を意味するのか(PRINCE2においてはネガティブあるいはポジティブ両方の影響をもたらすリスク)が定義され、リスク応答の特定、分析、評価、計画、実行及び報告の手順が説明されています。リスク・マネジメント活動がいつ行われるのか、誰が責任を負うのか、どの文書がリスク・マネジメントを裏付けるのかが説明されています。

PRINCE2 プロセス

次章では、PRINCE2の7つのプロセスが扱われています。プロセスは、PRINCE2のライフサイクルを形作り、プロジェクト・マネジメント・チームの各メンバーが行う活動及びその時期を説明しています。PRINCE2とPMBOK®ガイド[1] 「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」(A Guide to the Project Management Body of Knowledge) の大きな違いの一つは、PRINCE2がPMBOK®ガイドに比べ、プロジェクト・マネジメントにおける責任のより広範な定義に焦点をおいているということです。後者は、プロジェクト・マネージャに重きを置いておりプロジェクト・スポンサーの比重が低くなっています。PRINCE2は、9つの異なるプロジェクト・マネジメント・ロールの責任を定義しています。これは、PMBOK®ガイドと比較したPRINCE2マニュアルの大きな利点であると私は考えています。

テーラリング

第19章はマニュアルの中で最も重要な章であると言えるでしょう。ここでは、プロジェクトのニーズを満たすため、メソッドをどのようにテーラリングするべきかが説明されています。また、最適なプロジェクト・マネジメント・メソッドとして組織にPRINCE2を組み込む際、考慮する必要のある要素が類型化されています。

付録

本マニュアルには5つの付録が含まれています。一つ目は、上記の26のマネジメント製品の雛型です。PRINCE2プラクティショナ試験に向けて学習されている方の場合は、試験時にマニュアルを持ち込むことができます。プラクティショナ試験では、数多くの詳細な情報を正確に記憶できる方を除き、おそらく解答の際に付録Aを参照しなければならないでしょう。

付録Bはプロジェクト・ガバナンスについて簡潔に触れ、付録Cには上記のプロジェクト・マネジメント・チーム・ロールの9つの責任に関する詳細なリストが含まれています。付録Dでは、成果物に基づく計画作成テクニックの実行例が挙げられていまが、これはマニュアルに含まれる2つのテクニックの内の一つに過ぎません。付録Eでは、プロジェクトの全体的な状態を判断するために考慮すべきチェックリストが含まれています。

巻末には、非常に詳細な単語集及び包括的な索引が挿入されています。

マニュアルの値打ち

では、本マニュアルは、約130アメリカドルあるいはそれ以上の費用を費やす価値があるのでしょうか。答えは間違いなくYESです。PRINCE2プラクティショナ試験に向けて学習されているのであれば (PRINCE2ファンデーション試験での必要性は低くなるものの)、本マニュアルは大いに役に立ちます。

単にPRINCE2の資格取得をお考えではなく、既にプロジェクト・マネージャとして経験を積まれた方あるいはPMP®になじみのある方がより包括的にプロジェクト・マネジメントを理解したいという場合、PRINCE2マニュアルは、プロジェクトにおいて何をいつまで行う必要があるのか、に関する有益なガイドとなります。

PRINCE2プラクティショナ資格取得のみを目的とされる方も、試験中に必ず必要になるため、PRINCE2マニュアルを入手しましょう。

参考文献及び承認:

1. Project Management Institute (2013年)。「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」( A Guide to the Project Management Body of Knowledge: PMBOK® Guide)。ペンシルバニア: Project Management Institute, Inc. 589. ISBN-13: 978-1935589679

2. PMP® はProject Management Institute, Inc.の登録商標です。